親が亡くなったあと、実家の押し入れや棚から、アルバムや封筒に入った写真がたくさん出てくることがあります。量が多く、思い出もあるので、どこから手を付けてよいかわからなくなりがちです。
先に結論を書きます。写真は、急いで捨てる必要のないものです。 まず「捨てない箱」を作って写真を家の中の1か所に集め、遺影や手続きに使う写真を取り分けます。そのあとで、きょうだいで「原本を誰が持つか」と「複製を全員に配るか」を決めます。遺品整理を業者に頼むなら、作業の前に写真をすべて別の場所に移しておきます。
この記事は、写真とアルバムに絞った整理の手順です。仏壇や位牌、お墓のことは扱いません。
急いで決めなくてよい理由
家の片付けには期限があることもありますが、写真は場所をとる量のわりに、一度捨てると取り戻せません。国民生活センターには、亡くなった父の家の片付けを業者に頼み、大切な書類などは残す約束だったのにアルバムまで処分され、「ごみ処理場に運んだので取り戻せない」と言われた、という相談が紹介されています(見守り新鮮情報 第525号「遺品整理を頼むときは、事業者選びは慎重に」。2026年10月27日に確認)。
- 家の明け渡しや片付けの期限があるときも、写真とアルバムは段ボールにまとめて先に持ち出し、中身の判断はあとに回します。
- 気持ちが落ち着かない時期に、無理に1枚ずつ見なくてかまいません。箱に「写真・判断はあと」と書いておけば十分です。
最初にすること:家じゅうの写真を1か所に集める
写真はアルバムだけでなく、思わぬ場所に入っています。片付けを始める前に、次の場所を一通り見ておきます。
| 探す場所 | 入っていることがあるもの |
|---|---|
| 押し入れ・天袋・本棚 | アルバム、写真店の袋、額に入った写真 |
| 机・たんすの引き出し | 手帳にはさんだ写真、ネガ、はがき |
| 仏壇の周り・引き出し | 遺影の元の写真、法事の写真 |
| 箱や缶 | 古い白黒写真、スライド、フィルム |
| パソコン・スマートフォン・デジタルカメラ | 写真のデータ(別の手続きが要ることがあります) |
集めた写真は、湿気の少ない部屋に置きます。カビや貼りつきのあるものは、ほかと分けておきます。しまい方の注意は「写真や手紙の原本を傷めずにしまう」にまとめています。
スマートフォンやパソコンの中の写真は、端末のロックやアカウントの手続きが関わります。解約や初期化の前に確かめることは「亡くなった家族のスマホの写真を残す」にまとめています。
先に取り分ける写真
全体を見る前に、すぐ使う写真や、なくすと困る写真を先に抜き出します。
- 遺影の元になった写真(額の裏や写真店の袋に、元の写真やデータが残っていることがあります)
- 法事や手続きで使いそうな写真(家族がそろった写真、本人がよく写っている写真)
- 裏に名前や日付が書いてある写真(誰が写っているかの手がかりになります)
- 親が大切にしていたとわかる写真(財布や手帳に入っていたもの、額に入れて飾っていたもの)
遺影に使う写真を探している場合は、「遺影に使う写真の選び方」で、手元の写真が使えるかの確かめ方をまとめています。
3つの箱に分ける
全体を見るときは、1枚ずつ迷わないように、最初から3つの箱を用意します。
| 箱 | 入れるもの | そのあと |
|---|---|---|
| 残す | 家族が写っている、本人がよく写っている、場所や時代がわかる | 原本を誰が持つかを決める |
| 迷う | 誰が写っているかわからない、似た写真が何枚もある | 期限を決めて保留する |
| 手放す候補 | 風景だけの写真、ピンぼけ、同じ写真の焼き増し | きょうだいに見てもらってから決める |
「迷う」の箱は、半年後や一周忌のころなど、見直す日を箱に書いておきます。時間がたつと判断しやすくなることがあります。
わからない写真は、親の兄弟姉妹やいとこに見てもらうと、誰が写っているかがわかることがあります。わかったことは、写真の裏に直接書かずに、付せんやメモに書いて封筒に一緒に入れます。
きょうだいで分けるときの順番
写真は1枚しかない原本が多いので、分け方でもめやすいものです。次の順番で話し合うと、決めることが少なくなります。
- 「残す」箱の写真を、全員で一度見る 集まれない人には、スマートフォンで撮った写真を送ります。
- 欲しい写真を、それぞれが挙げる 重なった写真だけを話し合います。
- 原本を誰が持つかを決める 実家に住む人、法事を担う人などが、まとめて持つ例があります。
- 複製を全員に配る デジタルにしてデータで配れば、原本は1人が持っていても、全員が同じ写真を見られます。
- 決めたことを書き残す 誰がどのアルバムを持っているかを一覧にして、全員で共有します。
デジタルにする方法は「古い写真をデジタル化して本に使う」に、ネガやスライドが出てきたときは「家にあるネガ・スライドをデジタルにする」にまとめています。
ここに書いた順番は、話し合いを進めるための一つの例です。遺産の分け方全体で家族の考えが分かれている場合は、写真だけを先に決めず、相続の相談先(弁護士・司法書士など)にも確かめてください。
遺品整理を業者に頼む前に
国民生活センターは、遺品整理サービスの契約について、次のような助言をしています(「こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル」2018年7月19日、見守り新鮮情報 第525号 2025年10月30日。どちらも2026年10月27日に確認)。
- 複数の業者から見積もりを取り、見積書の内容を確かめる
- 料金・キャンセル料・作業の内容を、契約の前に確かめる
- 残す遺品と処分する遺品をはっきり分け、作業のときはできるだけ立ち会う
- 不用品を運ぶ業者が、市区町村の委託業者か、一般廃棄物処理業の許可を受けた業者かを確かめる
- 困ったときは、消費者ホットライン(188)に相談する
写真について言いかえると、次のようになります。
- 写真・アルバム・ネガ・額を、業者が来る前に家の外か、鍵のかかる部屋に移した
- 移しきれない場合は、「写真は処分しない」と見積書や作業の書類に書いてもらった
- 押し入れや引き出しの奥まで、写真が残っていないかを見た
- 作業の日に、家族の誰かが立ち会う
- 作業後に見つかった写真の扱い(連絡してもらう・取っておいてもらう)を決めた
手放すと決めたら
手放す写真は、写っている人に配慮して出します。自治体によって写真やアルバムの出し方が違うことや、お焚き上げを頼む場合のことは、「写真・アルバムを処分するときの方法」にまとめています。
残した写真を、家族の記録にする
残すと決めた写真は、箱に入れたままにせず、少しずつ見返せる形にすると、家族で話すきっかけになります。
- 写真の裏の書き込みや、親せきから聞いたことを、写真の番号と一緒に書き留める(「写真に添える言葉の書き方」)
- 10枚ほどを選んで、1冊のアルバムやフォトブックにする(「家族の写真を、一冊のフォトブックやアルバムにする」)
- 親の生い立ちがわかる写真がそろったら、家族の本の1章にする(「自分史を1章から始める」)
最後に、次のことを確かめておきましょう。
- 写真とアルバムを、家の中の1か所に集めた
- 遺影の元の写真、裏書きのある写真を先に取り分けた
- 「残す・迷う・手放す候補」の3つの箱に分け、迷う箱に見直す日を書いた
- 原本を誰が持ち、複製をどう配るかを、きょうだいで決めた
- 業者に頼む前に、写真を作業の場所から移した
