自分史や家族史を書き上げると、「出版したい」と考える人もいます。ただ、「出版」という言葉には、家族や親戚に配る本を印刷することから、書店やネットで売ることまで、いろいろな意味が含まれます。
先に結論を書きます。
- 家族・親戚・知人に配るだけなら、ISBN(書籍の番号)は要りません。 少部数の印刷で本の形にできます。費用は印刷代と送料が中心です。
- ネットや書店で売りたい、図書館で探せるようにしたいなら、ISBN の取得や、電子書籍・ペーパーバックの出版サービスを考えます。ISBN の取得は、1点だけなら11,000円(税別)です。
- 国立国会図書館への納本は、頒布(配る・売る)を目的に発行した出版物が原則として対象で、ISBN がなくても対象になります。ただし、個人の案内では「相当部数(通常100部以上)」が目安とされていて、家族に数冊配るだけの本は、当てはまらないことが多いと考えられます。
この記事の制度と料金は、2026年11月1日に、日本図書コード管理センター・国立国会図書館・Amazon の公式の案内で確かめたものです(印刷所の料金は記事中に確認日を書いています)。
この記事が役立つ人
- 自分史や親の聞き書きを書き上げ、本の形にしたい人
- ISBN を取るべきか、取らなくてよいか迷っている人
- 自費出版の費用の内訳を知りたい人
「配る本」と「売る本」で、必要なものが変わる
| 目的 | ISBN | 主な方法 | 費用の中心 |
|---|---|---|---|
| 家族・親戚に数冊〜数十冊配る | 不要 | 少部数の印刷(1冊から頼める印刷所など) | 印刷代・送料 |
| 知人や地域の人に配る・頒布する(100部前後〜) | 任意 | 冊子の印刷 | 印刷代・送料(納本の対象になることがある) |
| ネットで売る(電子書籍・ペーパーバック) | 電子書籍は不要。ペーパーバックはサービスの無料のものも選べる | 電子書籍・オンデマンドの出版サービス | 出版の手数料は無料のサービスがある。紙の本は売れるごとに印刷代が差し引かれる |
| 書店で売る | 必要(書籍JANコードも) | 出版社・取次との取引 | ISBN・JANコードの費用、印刷代、流通の費用 |
ISBN(書籍の番号)を取る方法と費用
ISBN は、本を特定するための国際的な番号です。日本では、日本図書コード管理センターが出版者記号を割り当てています。
| 申請の種類 | 使える番号の数 | 申請料 |
|---|---|---|
| 8桁(シングルコード) | 1点 | 11,000円+税 |
| 7桁 | 10点 | 22,000円+税 |
| 6桁 | 100点 | 40,320円+税 |
出典:日本図書コード管理センター「ISBNコード・書籍JANコードの申請料」、「ISBNコード取得の条件」、「申請の流れ」(2026年11月1日に確認)。
- 個人でも取れる:個人か法人か、販売品か非売品かを問わない(諸条件あり)と案内されています。
- 法律上の義務ではない:表示が必要かを、本を置いてもらう先(頒布先)に確かめてから取得を考えるよう案内されています。
- 書籍JANコードは別:書店で売るときに使う2段のバーコード(書籍JANコード)は、出版者記号とは別の料金で、年間の売上が1億円未満の場合は10,000円+税(3年間)、3年ごとの更新です。
- 日数:申し込みのあと、電話での内容確認、支払い、登録完了のメールまで、最短で1週間程度、書類が届くまで合計2週間(営業日)程度と案内されています。
家族に配るだけの本に ISBN を取っても、本の中身や仕上がりは変わりません。売る予定や、図書館・書店に置いてもらう予定があるかで決めます。
国立国会図書館への納本
国立国会図書館の納本制度では、日本国内で頒布を目的として発行された出版物は、原則としてすべて納本の対象とされています。
| 項目 | 国立国会図書館の案内 |
|---|---|
| 対象の目安 | 個人向けの案内では「相当部数(通常100部以上)」。オンデマンド出版物は、15部が実際に頒布されていることが目安 |
| 対象外の例 | ホチキス留めなどの簡易な綴じの冊子 |
| ISBN | ISBN や JAN コードがない本も対象 |
| 部数・期限 | 1部を、発行の日から30日以内に |
| 代償金 | 求める場合は、通常は小売価格の5割に、郵送の最低料金を足した額が目安。送料だけの支払いも選べる |
| 送り方 | 無償なら、事前の手続きなしで郵送・宅配便で送れる(着払いは不可) |
出典:国立国会図書館「出版物の納入をお願いします」、よくある質問(2026年11月1日に確認)。
家族に数冊だけ配る本は、この目安に当たらないことが多いでしょう。100部以上を作って地域や知人に配る、販売するといった場合は、納本の対象になるかを国立国会図書館の案内で確かめてください。納本された本は、国立国会図書館の蔵書として保存されます。
電子書籍・ペーパーバックで出版する
Amazon の Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)は、電子書籍と紙の本(ペーパーバック)を無料で出版できると案内しています。
| 項目 | KDP の案内(Amazon.co.jp・2026年11月1日に確認) |
|---|---|
| 出版の費用 | 電子書籍・紙の本とも無料で出版できる |
| 電子書籍のロイヤリティ | 35% か 70% を選ぶ。日本で70%にするには KDP セレクトへの登録などの条件がある |
| ペーパーバックのロイヤリティ | 希望小売価格が999円以下は50%、1,000円以上は60%。そこから印刷コストを差し引く |
| ペーパーバックの印刷コスト(黒) | 24〜110ページは標準判で422円 |
| ISBN | 電子書籍は省略できる。ペーパーバックは無料の ISBN を使える(KDP の中だけで使える番号で、出版社の名前は「個人出版」のように表示される) |
| 対象外 | 日本語のハードカバー |
出典:KDP、電子書籍のロイヤリティ、ペーパーバックのロイヤリティ、印刷コスト、ISBN。
たとえば、黒の本文で100ページのペーパーバックを、希望小売価格1,200円で売る場合、KDP の計算式(ロイヤリティの率×希望小売価格−印刷コスト)では、60%×1,200円−422円で、1冊あたり298円の計算になります(実際の金額は、税の扱いなどで変わることがあります。出版の画面で確かめてください)。
ネットで公開すると、家族以外の人も読めるようになります。家族の名前や住所、病気のことなど、書かれている人が公開を望まない内容がないか、出版の前に本人や家族に読んでもらいます。
少部数で本の形にする(家族に配る本)
ISBN を取らずに、家族に配る分だけ印刷する方法です。くわしい比べ方は「家族の本を印刷・製本する方法」にまとめています。ここでは2つの例を挙げます。
1冊から背表紙のある本にする
ペンタロー
広告(株式会社ニューエッジ)は同人誌の印刷が中心の印刷所で、無線綴じ(背表紙のある綴じ方)の本を1冊から注文できる注文表があります。A5・本文40ページ(モノクロ)・カラー表紙の仕様では、10営業日発送で1冊5,020円、5冊6,400円(税込)と表示されていました(2026年10月22日に確認。仕様と時期で変わる)。くわしくは「家族の本を1冊だけ、背表紙のある本(無線綴じ)にする」にあります。
冊子として部数を作る
ネット印刷通販のプリントアース広告(インクアート株式会社)の中綴じの冊子は、8〜96ページ(それより多い場合は問い合わせ)で、最短1営業日発送と案内されています。最少の部数は、同じページの中に「最小ロット25冊から」と「1部から発注可能」の両方の書き方があり、価格表は25冊からでした(中綴じ冊子。2026年11月1日に確認)。中綴じはホチキスで留める綴じ方なので、国立国会図書館の案内にある「簡易な綴じ」に当たるかは、納本を考える場合に確かめてください。
費用の内訳を書き出す
| 費用の項目 | 配る本(少部数) | 売る本(電子書籍・ペーパーバック) | 書店で売る本 |
|---|---|---|---|
| 番号 | なし | なし〜サービスの無料の番号 | ISBN(1点11,000円+税〜)、書籍JANコード(10,000円+税・3年) |
| 印刷 | 部数×1冊の印刷代 | 紙の本は売れるごとに差し引き | 部数×1冊の印刷代 |
| 送料 | 配る先への送料 | なし(サービスが発送) | 流通・保管の費用 |
| 表紙・組版 | 自分で作るか、頼むか | 同じ | 同じ |
表紙のデザインや、文字の組み方(組版)を人に頼むと、その費用もかかります。自分で原稿を整える方法は「家族の本を印刷会社に頼むときのデータの作り方」にあります。
よくある質問
ISBN がないと、本として認められませんか?
ISBN は法律上の義務ではないと案内されています。家族に配る本なら、なくても困りません。
自費出版の会社に頼むのと、何が違いますか?
自費出版の会社は、編集・デザイン・印刷・流通などをまとめて引き受けることが多く、その分の費用がかかります。どこまで頼むか(編集・校正・表紙・ISBN・書店への流通)を書き出し、見積もりで項目ごとに比べてください。この記事では、特定の自費出版の会社の料金は確かめていません。
最後に、次のことを確かめておきましょう。
- 本を「誰に、何冊」届けたいかを書き出した
- 売る予定・図書館に置く予定があるかで、ISBN が要るかを決めた
- 100部以上を頒布するなら、納本の対象かを確かめた
- 電子書籍・ペーパーバックで公開する前に、書かれている人に了承をもらった
- 費用を、番号・印刷・送料・表紙と組版に分けて見積もった
